2026年3月27日:日本地理学会春季学術大会研究グループ研究集会報告
研究グループ研究集会報告
2026年3月27日 日本地理学会春季学術大会「ジェンダーと空間/場所」研究グループ研究集会
発表者:杉江あい(京都大学)
司会:関村オリエ(東京女子大学)
テーマ:フィールドワーク論の再検討―「フィールドワークと性暴力・セクシュアルハラスメントに関する実態調査アンケート」第一報からの示唆
本研究集会では、共同研究「フィールドワークとハラスメント(Harassment in Fieldwork: HiF)」が2022年に実施したアンケート調査の第一報をもとに、従来のフィールドワーク論の問題点と今後の教育に求められる視座について議論が行われた。当アンケートでは、性暴力被害の多くが学生時に経験されたものであることが明らかとなり、従来のフィールドワーク教育が学生を十分に守れていなかった現状が浮き彫りになった(大友ほか2025)。回答者は学会に残っている人々に限られており、把握できた被害は氷山の一角に過ぎないと考えられる。
本発表では、調査倫理だけでなくフィールドにおける性被害やハラスメントの可能性について事前に注意喚起し、被調査者だけでなく調査者自身を大切にする必要性が強調された。「国内だから安全」「ガイダンスを受ければ大丈夫」とは言えず、既存のガイダンスの改善や被害防止の難しさについてさらなる検討が求められる。他方で、女子学生のフィールドワークを制限したり、過度に恐怖を煽ったりしないよう配慮することも重要である。
また、被害を受けた学生が指導教員に相談するケースは少なく、日頃から信頼関係を築くことが不可欠であるとされた。相談を受けた際には、冗談めかした語りであっても軽視せず傾聴し、教員一人で抱え込まず専門家や支援機関につなぐことが推奨された。被害を学生の力量不足に帰さないこと、フィールドとの関係維持を強要しないこと、研究テーマや調査地の変更を厭わないことなども重要な視点として共有された。フィールドワーク初心者への教育や指導において、調査者自身の安全や身体的制約を含めた配慮が欠かせないことが確認された。悩みを抱えるフィールドワーカーが孤立せず、つながる場をどのように作っていくか(相談の場やネットワークの構築、大学や学会を越えた安全対策の知見の蓄積、匿名やオンラインで参加可能な仕組みの必要性)が今後の大きな課題として共有された。
質疑応答では、フィールドワークの意義と調査者/被調査者間の非対称性、相談しやすい環境づくり、女性教員の役割と課題、地理学における「男性的フィールドワーク」観の影響、LGBTQに関する調査設計上の課題など、多角的な論点が提示された。
引用文献
大友瑠璃子ほか 2025.フィールドワークと性暴力・セクシュアルハラスメントに関する実態調査アンケート (2022年) の報告: 1 定量的な解析. https://safefieldwork.live-on.net/survey/report1-jp/
2026年3月27日 日本地理学会春季学術大会「ジェンダーと空間/場所」研究グループ研究集会
発表者:杉江あい(京都大学)
司会:関村オリエ(東京女子大学)
テーマ:フィールドワーク論の再検討―「フィールドワークと性暴力・セクシュアルハラスメントに関する実態調査アンケート」第一報からの示唆
本研究集会では、共同研究「フィールドワークとハラスメント(Harassment in Fieldwork: HiF)」が2022年に実施したアンケート調査の第一報をもとに、従来のフィールドワーク論の問題点と今後の教育に求められる視座について議論が行われた。当アンケートでは、性暴力被害の多くが学生時に経験されたものであることが明らかとなり、従来のフィールドワーク教育が学生を十分に守れていなかった現状が浮き彫りになった(大友ほか2025)。回答者は学会に残っている人々に限られており、把握できた被害は氷山の一角に過ぎないと考えられる。
本発表では、調査倫理だけでなくフィールドにおける性被害やハラスメントの可能性について事前に注意喚起し、被調査者だけでなく調査者自身を大切にする必要性が強調された。「国内だから安全」「ガイダンスを受ければ大丈夫」とは言えず、既存のガイダンスの改善や被害防止の難しさについてさらなる検討が求められる。他方で、女子学生のフィールドワークを制限したり、過度に恐怖を煽ったりしないよう配慮することも重要である。
また、被害を受けた学生が指導教員に相談するケースは少なく、日頃から信頼関係を築くことが不可欠であるとされた。相談を受けた際には、冗談めかした語りであっても軽視せず傾聴し、教員一人で抱え込まず専門家や支援機関につなぐことが推奨された。被害を学生の力量不足に帰さないこと、フィールドとの関係維持を強要しないこと、研究テーマや調査地の変更を厭わないことなども重要な視点として共有された。フィールドワーク初心者への教育や指導において、調査者自身の安全や身体的制約を含めた配慮が欠かせないことが確認された。悩みを抱えるフィールドワーカーが孤立せず、つながる場をどのように作っていくか(相談の場やネットワークの構築、大学や学会を越えた安全対策の知見の蓄積、匿名やオンラインで参加可能な仕組みの必要性)が今後の大きな課題として共有された。
質疑応答では、フィールドワークの意義と調査者/被調査者間の非対称性、相談しやすい環境づくり、女性教員の役割と課題、地理学における「男性的フィールドワーク」観の影響、LGBTQに関する調査設計上の課題など、多角的な論点が提示された。
引用文献
大友瑠璃子ほか 2025.フィールドワークと性暴力・セクシュアルハラスメントに関する実態調査アンケート (2022年) の報告: 1 定量的な解析. https://safefieldwork.live-on.net/survey/report1-jp/
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